研究目的

■本研究の目的

将来の農村社会は、その多様性と農村空間の多機能性によって決まります。本研究は、日本及びEU・ルーマニアにおける事例に関する調査・研究にもとづき、農村志向の女性の移動および移住した彼女たちのその後の起業活動、つまり農村の”アントレプルヌース”(女性起業家)の活動について取り扱います。また、彼女らによる革新的なビジネスと地域の農業システムとの相乗効果について探り、農村社会の持続可能性における起業家達の貢献について明らかにすることを目的としています。

■本研究の背景

日本およびEUの農村社会は、新しい農村起業の促進を介した諸活動の多様化に依存しており、その起業は雇用と収入をもたらし、持続可能な発展を助けています。また、EUでは、農村女性の多様な役割および起業家活動に関する多数の調査があります(Little, Panelli 2003*)。近年、そうした研究は、ルーマニアにおける農村の女性起業家達について向上している状況や、農村の多様化、農村企業、ルーラル・ツーリズムへの要因をもたらすようなEUの共通農業政策(CAP)の枠組みの役割についてをも明らかにしてきています(Buller, Hoggard 2004**)。ルーマニアのカルパチア山脈における農村社会に関して、佐々木ほか(2011***)がおこなった既存の調査では、外国で働いた後に戻ってきた農村女性たちによって「輸入された」革新的なビジネスモデルについて指摘しています。また、日本ではそうした研究が農村地理学で行われていましたが、例えば栃木県の家族経営の農場に注目して行われた鷹取(2013****)による現地調査では、女性達が経営する農村企業と地域の営農組織との協働活動に注目し、日本における農村志向の移住に関して増加する傾向について指摘しています。

■3年間の研究の焦点

本研究では、具体的に下記の4つの点に注目しながら農村の女性の起業活動について調査を進めます。

  1. 女性の農村志向の移動
  2. 農村ビジネスの展開に対し、女性によって進められる革新的な取り組み
  3. 地域の営農組織と農村企業との新たな共同関係
  4. 持続可能な農村コミュニティに対する農村起業家の社会的貢献

(もちろん調査・研究の対象は女性に限定されるものではなく、現地調査を進める段階で、網羅的にヒアリング調査等を進めます。)

■本研究の意義および期待される成果

2015年8月にルーマニアのNGO事務所で行ったヒアリング調査

2015年8月にルーマニアのNGO事務所で行ったヒアリング調査

本研究は詳細なフィールド調査に基づいて行われ、日本およびEUの様々な事例地域での調査が重点的に進められます。両地域に共通する可能性の高い解決策を提示しながら、比較検討する方法により、双方の相違点および共通点を明らかにしていきます。また、地理学の体系的な視点により、異なった空間スケールにおける諸要素について、重層的で複雑な相互作用を把握していきます。さらに、研究代表者および担当者が事例地域でこれまでに蓄積してきたデータや知見、経験に基づき、経年的な観点・視点を加えるとともに、農業経済学、農村社会学、ツーリズム研究といった学際的な資料・文献も活用します。また、そうした諸分野の研究者らと適宜情報交換しながら、成果の検証を確かにしていきます。

なお、本研究は、日本およびルーマニア出身の3名の女性地理学者によって進められており、主に日本語、英語、ルーマニア語に対応しながら、調査・研究にあたっています。

<北海道十勝地方の農家の圃場にて> レストラン用に小さな蕪を出荷する準備…のお手伝い

<北海道十勝地方の農家の圃場にて>
レストラン用の小さな蕪を出荷準備している農村女性
&佐々木(お手伝いしつつ生の声を聞いてみることも…)

<文献>
*Little, J. Panelli, R. (2003): Gender Reseach in Rural geography. Gender, Place and Culture, Vol. 10, No.3

**Buller, H., Hoggart, K. (2004): Women in the European Countryside. Ashgate

***佐々木リディアほか(2011): カルパチア山村ルカルにおける兼業・プルリアクティビティーの変化-ルーマニアにおける農村の持続的発展の危機とその再生の可能性. 日本地理学会発表要旨集 (2011s). →要旨

****鷹取泰子(2013): 有機農業に関わる女性の就農構造とネットワークの構築関東地方における農業生産法人の事例から. 日本地理学会発表要旨集 (2013a). →要旨

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